遺言 Leave a will

遺言書があると家族を守る武器になる

生前に遺言書を作成することを「縁起でもない」「うちには財産がないから必要ない」などと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現実には、仲の良い家族であっても、また相続財産の多少に関わらず、相続人の間で争いになることがあります。
相続トラブルを避ける為に遺言書の作成をしましょう。遺言書がないと相続人全員で遺産分割協議をしなければならず、ケースによっては協議成立までに時間がかかります。

被相続人にとってのメリット
  • 自分の意思を反映した財産の分与ができる。
  • 相続人でない人(内縁の夫や妻・子がいる場合の孫・子の配偶者等)にも財産を残すことができる。
相続人にとってのメリット
  • 相続人同士での相続争いを避けることができる。
  • 相続手続きを迅速に進められる。

遺言書の種類

遺言には、普通方式の遺言と特別方式の遺言があります。

特別方式の遺言は、死の危険が迫っている場合(死亡危急者遺言・船舶遭難者遺言)や、特殊な環境下にいる場合(伝染病隔離者遺言・在船者遺言)など、やむを得ない事情により普通方式の遺言をすることができない場合に限って認められた、簡易な方式による遺言です。そのため、普通方式の遺言をすることができるようになったときから6か月間遺言者が生存するときは、特別方式の遺言は効力を失います。

特別方式の遺言は、あまり使われることがないので、ここでは、普通方式の遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)についてご説明します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する遺言書です。

以前は、遺言の全文を自書しなければなりませんでしたが、民法改正により、平成31年1月13日から、遺言書に添付する財産目録については、自書でなくてもよくなりました。例えば、パソコンで作成した目録を添付してもよく、さらに、銀行の預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を目録として添付することも可能です。ただし、財産目録の各ページに、遺言者が署名及び押印することを要します(契印は不要)。

自筆証書遺言は、自分ひとりで手軽に作成でき、費用もかからない点がメリットですが、民法に定める方式に従っていないと遺言が無効になってしまう、内容に問題があり遺言を執行できない、紛失したり相続人に破棄や隠匿されたりするリスクがあるなどのデメリットもあります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授し、公証人がその内容を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言書です。公正証書を作成するには、証人2人以上の立会が必要です。

公正証書遺言は、公証人という法律のプロが作成するので、方式違背や内容不備のおそれがなく、また、作成された遺言書は、公証役場で原本が保管されるため、紛失や偽造の心配もありません。

公証人に支払う手数料がかかるのがデメリットと言えますが、自筆証書遺言に比べるとメリットの方が多いと思います。因みに、公証人の手数料は、遺言の目的である財産の価格に応じて決まります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書である必要はありません)に署名押印をした上で、その書面を封じ、書面に押した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人以上の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人と共にその封紙に署名押印するやり方で作成する遺言書です。

公正証書遺言と異なり、遺言の内容を公証人や証人にも知られないため、完全に秘密にすることができますが、公証人が遺言書の内容を確認することができないので、遺言書の内容に不備があったり、遺言が無効になったりしてしまう危険性がないとはいえません。

【付言事項】家族に残すことば。 付言事項で想いを伝える

付言事項とは、法定遺言事項ではないことを、遺言書で付言する事項のことをいいます。例えば、遺言書を作成した経緯や、家族への感謝の気持ち、また葬儀や納骨に関する希望などを遺言者が自由に書くことができます。
付言事項は、法定遺言事項とは異なり法的効力はありませんが、付言事項を書くことによって、相続人が遺言者の気持ちを尊重し、遺言執行がスムーズに行えるようになります。
当事務所では、相続争いを避けるという観点に立ち、依頼者様のお気持ちに沿った付言事項を作成致します。

遺言書の検認

「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

検認は、一種の形式的な検証手続ないし証拠保全手続であって、実質的な遺言内容の真否や効力の有無を判定するものではありません。
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。また、遺言を執行するには、遺言書に検認済証明書が付されている必要があります。
しかし、公正証書遺言及び後述する「自筆証書遺言保管制度」に基づき遺言書保管所(法務局)に保管されている自筆証書遺言については、検認の手続は不要となります。

自筆証書遺言の保管制度について

令和2年7月10日から、法務局による「自筆証書遺言保管制度」が始まりました。これは、自筆証書遺言を作成した人が、遺言書保管所(全国の法務局の各本局)に、その遺言書の保管を申請することができる制度です(本制度を利用するかどうかは任意)。この制度により、自筆証書遺言の紛失や相続人による破棄・隠匿を防止することができ、また、遺言書の存在の把握が容易になりました。
遺言書保管所に保管できる遺言書は、自筆証書遺言で、かつ本制度において定められた様式に従って作成されたものに限られます。遺言書の保管の申請手続は、遺言者本人が遺言書保管所に遺言書を持参して行わなければなりません。保管の申請手続が完了すると、遺言者に保管番号等が記載された「保管証」が交付されます。遺言書保管所には、遺言書の原本とその画像データが保管されます。遺言者は、いつでも遺言書の閲覧の請求をして、預けた遺言書の画像や原本を閲覧できるほか、保管の申請の撤回をすることにより、遺言書の返還を受けることもできます。